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ケニア旅行記U

(2010年8月6日〜2010年8月14日)



 

★ 5日目 ★ 


 
カバの鳴き声は心地よい睡眠を誘発する。

この日の夜もカバは愛しく鳴き、明け方にはテントの前をのんびりと歩いて行く。そのあとには見守るようなレンジャーさんの足音。
威嚇のための発砲音が2発轟いたのは6時前。ゲストが起きだす時間には動物にはお暇してもらわないといけないということか。本日の耳サファリ終了。
 
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朝6時、モーニングジャンボの時間。紅茶を持ったスタッフがランタンに灯りを点してから僕たちの朝は始まる。
 
 
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サミーはこの日いつも通りの朝を迎えた。いつも通りの準備をして車寄せにサファリカーを着けた。

6時25分、朝のサファリの始まる5分前、やはり奴等は来た。さすが日本人の5分前集合はここマサイマラでも健在だ。

今日は何を見せようか、サミーは考えを巡らせながらサファリカーを走らせた。考えていたせいか一本手前の道を曲がりそうになってしまった。失念だ。
最初に出会った動物、この日最初に客の興味をひいた動物はという意味だが、獲物にかじりつくハイエナだった。トピの首から上の部分を必死に噛み付く姿に客は歓声を上げる。
 
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そのとき、カメラばかりいじって無口だった男が「これはハイエナのハンティングか?」と聞いてきた。サミーは意識的に笑みを浮かべながら「ノー」と答える。すると無口な男が「ライオンか?」と尋ねる。サミーはトピが誰にやられたかなど知るはずもなかったが、客を喜ばせるために静かに首を縦に振る。一層の喜びを浮かべる客。サミーはまたひとつ幸せなウソをついたことを神に詫びるように上空に目をやった。

しばらく、クルマを走らせるとまたハイエナが現れた。先程と同じ動物に客のリアクションは薄い。客を喜ばせ続けることは難しい。サミーは小さなため息をついた。

しかし、サミーに転機が訪れた。ハイエナを見過ごした後に出会ったオオミミギツネに無口な男が異常な反応を示したのだ。
 
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オオミミギツネ、確かにレアな動物だが普段の客のリアクションはいまいち。それなのにこの無口な男の興奮具合は絶頂を迎えている感さえある。そして、クルマが止まるのを待つ間もなく臆病なオオミミギツネが姿を消すと無口な男は見るのさえ憚れる程落胆したのだった。

次にサミーが見つけたのは蟻塚に陣取る2頭のチーターだった。サミーは静かにクルマを悪路に乗り入れる。サミーの挙動に客の緊張感も高まってくる。クルマが進む。チーターの視線をサミーは感じ取る。ハンティングだ。チーターの視線の先にはイランドとシマウマ。チーターの好物でないにせよ間違いなくハンティングだ。サミーはエンジンを切り、遠目からハンティングを見守るよう視線で客に促す。ハンティングなどそう易々と見れるもんじゃない、朝のゲームサファリはこれで客も満足するだろう。サミーは思うのだった。
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しかし、ここでもサミーは無口な男の表情が浮かないことに一抹の不安を覚えた。ハンティングを見たくないのか?サミーにはわからなかった。無口な男がチーターのハンティングよりイランドに近付けない焦燥感を覚えていたことを、サミーはまだ知らない。

無口な男、そう僕はこの日のゲームサファリに少し落胆していた。目の前で行われるだろうチーターのハンティングがシマウマにバレて失敗したことも要因だが、まだ見たことがなかったイランドを遠目でしか見れなかったことが残念だった。たぶん獲物を取り損ねたチーター以上に落ち込んでいただろう。
 
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さらに会いたかった動物オオミミギツネの悪そうな笑顔が見れなかったこともこの気持ちに追い打ちを掛けている、そう自覚もしている。チーターのハンティング失敗の後のサミーの口笛がさみしく心に響く。さみしく響きすぎて、こんな売れない小説家の真似事をしてしまった。失念だ。


そんなわけで、朝のサファリはまだまだ続く。

サファリカーは小高い丘にやってきた。サバンナを一望できる大きな岩の上にはライオン。パラダイスプライドの面々がお休み中だ。
 
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肉食動物に出会うとやはりお腹の空き具合を見てしまう。ハンティングが見たいとかそういんじゃない。簡単に言えばそこに「命」を感じてしまうから。
ケニアに来てふと思うのは、小さい頃と感情移入が逆になっていること。テレビで流れたライオンやチーターのハンティング映像が非常に残酷だと感じた幼少期。その気持ちを引きずってずっと肉食動物の食事シーンは好きじゃなかった。
でもこうしてケニアで動物たちを見ていると、おびただしい数のシマウマやヌーに対して、腹を空かした数少ない肉食動物に出会うと、嫌いだった肉食動物を応援してしまう。「生きる」を目の当たりにしているんだと思う。
獲物たるひとつの命が失われ、その代わりにいくつかの命が今日を生き延びる機会を与えられる。それが繰り返されていく。獲物たる動物が多くの他の動物に「生きる」を分け与えて命を全うしていく、言いすぎかもしれない。
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大阪府と同じくらいの大きさと言われるマサイマラ。その中でも僕たちの行動範囲は限られてしまう。
大草原の中で現在地を知る術は旅行者には難しい。昨日と同じ風景を見ている錯覚に陥る。遠くに丘が見え、そこに前回泊まったマラセレナロッジが見える。その下にはおびただしいほどのヌー。

ヌーの手前にはマラ川があるはずだ。
 
 
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朝食へようこそ。

テーブルに着く僕たちにフランクは誰よりも早く気付く。しかし、その後の対応はのろい。フランクの動向を注視していると、動作はテキパキなんだけど、ゲストとの会話がのんびりすぎるのだ。
このときも2人分の目玉焼きを持ってきて、先に僕に渡しちゃったもんだから、レディーファーストをミスったとかひとりでぶつぶつ反省しやがった。憎みきれない。。。

【本日の僕の朝食】
ヨーグルト、目玉焼き、ポテト、紅茶
 
 
 
昼のサファリが始まる。朝のサファリ終了後、朝食を挟んで1時間半後に出発する昼のサファリは忙しい。朝食にゆっくりコーヒーでも飲んだら、利尿作用の激しい僕たちはブッシュトイレを余儀なくされる。そうこの日から朝食のコーヒーは控えるようになったのだ。

そして昼のサファリは平和だ。サミーは朝と夕方のサファリはサファリカーをねじ伏せるようにサファリカーを操るのに、この時間のサファリはサンダルでコンビニに行くような顔でクルマを運転する。スピードは出さず、ロッジ周辺の水場で地味なサファリの楽しさを教えてくれる。
 
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ギザギザ模様が特徴のマサイキリン。サミーはキリンと併行しながらクルマを走らせ、キリンのスピード感を教えてくれる。結構早いぞ。

それから、名前を忘れた鳥。華奢な足。歩き方をじっくり観察。さいばしの紐の部分が膝相当と考えるのがよろしい。
 
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ウォーターバックの♂。メスもたくさんいたけどオスが角があってカッコいい。ウォーターバックはみな何も食べていないのに口をもぐもぐ動かし続けている。口に何か入っているのかもしれないけどそんな形跡はなし。僕たちはそんなもぐもぐなウォーターバックを「チューイン(グ)さん」と呼ぶことに決めた。改めましてチューインさんの♂。

その他にも肉食動物が元気を失くすのを見計らったように、インパラ、トンソンガゼル、シマウマ、イボイノシシが悠々と時間を過ごす。緊張感のない草食動物は少し挑発的でなかなかイカしてるのだ。


そんな肉食動物の代表ライオンに水場の木陰で出会う。ライオンの子供2頭。水場があれば、動物が集まり、その動物を獲物とする動物もまた集まる。
 
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留守番中に突然現れたサファリカーを見て落ち着きを失う子供ライオン。子供と言っても勝てる気のしない大きさだ。この隣の茂みには襲われたトピが半分くらい食い散らかされたままで残っていて、ここがライオンの棲み家であることがわかる。

この茂みの横をゾウが歩き、バブーンが歩く。平和。
 
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ランチへようこそ。

ガバナーズ役立ち情報をひとつ。ミネラルウォーターは毎日1本ずつ部屋に用意される。しかもランチとディナー時にミネラルウォーターを頼めば無料でもらえる。そんなことを知らない節約家夫婦はナイロビから3リットルのミネラルウォーターを持参しちまったぜ。
ちなみに食事時にコーラを頼んだら請求は2ドル。その場はサインだけで支払いはチェックアウト時なんだけど、そんなに高くない値段設定ですよね。

【本日の僕の昼食】
スープ、バッフェ1皿、シャーベット、コーヒー
 
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ランチも済んで部屋でだらだらしようと戻ったら面白い光景を見てしまった。テントの前の川に面した手すりにバスタオル類が風に揺れて干してあったのだ。そう、バスタオル類は乾かすだけで交換してくれないんです。自然光殺菌&エコです!!!

ちなみにベッドメイキングも毎日ありますがシーツの交換はなし。潔癖症の方はタオルに目印を付けておくことをお勧めします。
 
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午後のサファリ。

サファリが始まる午後3時半はやはり陽が高く、暑さも残るため動物たちの動きはとぼしい。サミーは朝見たヌーの様子を見に行くようだ。サミーは言わないが、進む方向でそんな気がする。

木陰には昨日会ったチーターの親子が暑さをしのいでいる。サファリカーは進み、マラセレナロッジが見え始めた頃、セグロジャッカルが現れ、同時に顔をしかめたくなるような気配に襲われた。
 
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そう、まだ川は見えないのに悪臭が漂ってきた。2週間世話を怠ったザリガニの水槽のような匂い。サミーがつぶやく。empty。空っぽ?

すると、僕たちの視界は何十頭ものヌーの死骸が横たわるマラ川をとらえた。ヌーの川渡りのあとかた。
 
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川向うの草を食みたいヌーが、ワニの危険を知りながら命を掛けて川渡りする姿は壮観だと言う。生き続けるために命を掛ける、普段カッコ悪いヌーを知るだけにその雄姿は見てみたい。
しかし、やはりヌーはカッコ悪い。落ち着いて一頭一頭が整列して川渡りをすれば、ワニに襲われ命を落とすヌーはワニの数だけで済む。それなのに臆病なヌーは慌てふためいて川渡りするもんだから味方同士将棋倒しになって、足を痛めたり溺れたりで、この時もワニ2頭に対して30頭をくだらないヌーが自滅しちまったのだ。
ワニ、濡れ手に粟。ハゲワシ・ハゲコウ、漁夫の利。
 
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そんなワニ、手が短いので肉を食いちぎるためには全身を駆使した遠心力を活用しなくちゃいけないらしく、そのダイナミックさとアフリカハゲコウの静寂さを対比してみました。
 
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しばらくマラ川でヌーの川渡りの残骸を目に焼き付けてから、サファリカーはスピードを上げて走る。僕たちは複雑な気持ちを抱きながら、正直失礼かもしんないけど服に染みついた死臭を取り除くかのようにサファリカーに当たる風を利用して、いろんなものを払拭しようとした。払拭したかった。このままじゃ夜ゴハンなんか食えねえじゃねえか。

そんな気持ちは簡単に払拭される、僕限定だが。イランドだ。感覚的に言えば3日くらい前、日記を辿れば今朝遠くからしか見れなかったイランドに会えたのだ。レイヨウ類最大種。噂によればイランドの肉は牛肉に似ているらしい。南アフリカやアメリカでは家畜化の試みがあるそうだ。うーーーん確かに全身ヒレ肉のようだ。
 
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そんなイランドを見て、僕は「ソックス、ソックス、ソックス」と大興奮してしまった。足元がソックスを履いてるようでかわいいじゃないか。立ち去る姿も優雅なのだ。
しかし今考えたら、ソックスやニーソ好きのマニアック野郎かと疑われた感じも否めないのがなぜか悔しい。
 
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ロッジに戻る際、行きに見たチーターを探しに行ったら同じ場所でまだ休憩中だった。

そうだ、そうそうこのサファリ中自分だけの流行り言葉があった。サファリに行く日本人がだいたい読んでいる本に小倉寛太郎さんの「フィールドガイド・アフリカ野生動物」がある。ちょっと古い本だけど、サファリには最適な実用書だ。そんな本なのに前回、僕はこの本をほとんど読まなかった。あまり知識を詰め込むとサファリ自体の感動とか印象が目減りしそうだったから。

で、今回たまたま退屈な時にこの本を読んでいたら、ある言葉が頭から離れなくなったんです。それは「相(そう)」。本の中では「鳥相が豊か」とか「動植物相が似通っている」とか書いてあって、意味もよくわからないままこの言葉を使いまくってしまった。
たとえば、昼食バイキング時は「肉相が豊かなチョイスだね」とか、朝食時は「食物繊維たっぷり相だね」とか。

そして、寝ている7頭のライオン相を見ていたら、みんなサファリカーを邪魔くさそうに起き上がって、小と大の排出行為を見せつけてくれました。大の時は尻尾ビーーーーンです。
 
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サファリの終了時間が迫り、サファリカーは砂塵を巻き上げロッジに戻る。こんなときは身を屈め、手足を踏ん張るのがサミー車の掟だ。

サミーがそんなサファリカーを急停車させた。掟を守ってるから無事対応して、そんな自分に誇りを感じてると、サミーが言う。ベイビーだ、わからなかったら影を見ろ。

確かに親鳥の左にベイビーが。サミーはすごかった。
 
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アリガトウゴザイマシテ。。。

レストランに行くと目敏いマネージャーが僕たちを見つけて、唯一知ってるだろう日本語で挨拶してくる。満面の笑顔。
しかし、次に来たオーストラリア人の紳士には引き締まった顔で礼儀正しい挨拶をする。いつもこんな感じで調子のいい野郎なんで、僕たちは彼をジャーマネのザキヤマさんと呼ぶ。

Welcome to dinner !

ザキヤマさんと話す僕たちに気付いたフランクがやってきて挨拶をする。いつも通りのフランク節が始まる。フランクの応対をひとつひとつできているか確認している自分はまるで覆面調査員に化けた両親のようだ。

そんなフランクがジャーマネのザキヤマさんに偉そうに指示を出していたのを僕は見てしまった。ケニアではそれでいいのか?日本じゃ通用しないぞ。両親の心配は続く。
 
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【本日の僕の夕食】
スープ、サラダ、メインはポーク(写真上、下は嫁のマッシュルームのリゾット)、アーモンドケーキ、紅茶
 
 
【本日お見かけした動物】
バブーン、マングース、ブチハイエナ、オオミミギツネ、セグロジャッカル、ライオン、チーター、ハイラックス、アフリカゾウ、グラントシマウマ、カバ、イボイノシシ、マサイキリン、イランド、ウォーターバック、ハーテビースト、トピ、ヌー、インパラ、トムソンガゼル、グランドガゼル、バッファロー、ワニ、ダチョウ、アフリカハゲコウ、ハゲワシ、その他記憶から漏れた野郎ども。




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