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ケニア旅行記U

(2010年8月6日〜2010年8月14日)







 

★ 7日目 ★

 

何がきっかけで目を覚ましたのだろうか。僕の耳に響く、少し甲高い悲鳴音。慌ただしい足音。数分後にはライオンと思われる威嚇のための「ガオー」がはっきりと聞こえてくる。そして静寂。
僕の耳サファリの成果だ。おそらく、ライオンがハンティングを成功させ、ライオン同士獲物を分け合う際、おいしい部分で取り合いになった結果だろう。サミーは気が付いただろうか?嫁は夢の中だ。

この日の朝もホットチョコレートを持って来てもらう。
朝が始まった。
 
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今朝はちょっとドライバーたちの表情が硬い。いつもはニコニコしてるのに緊張感がうかがえる。サミーの表情もそう。普段はポレポレ(のんびり)出発するサファリカーが、今日はサファリ客を急かすように動き始める。
 
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僕たちのサファリカーも走り出した。いつものサミーだったらサファリカーをぶっ飛ばすのに、今朝のサミーはロッジを出ても低速でロッジ周辺に目を向ける。他のサファリカーもそう。連隊で動くことのないサファリカー同士がロッジ周辺をしらみつぶしにローラー作戦でゆっくり進んでいく。夜中にハンティングをしたライオンが近くにいる、そんな空気だ。サミーは何も言わない。サファリ客に過度な期待を抱かせないらしい。

突然、サファリカーが急加速した。ロッジからかなり近い場所、そこにライオンがいた。最初に見たのはメスライオン、その奥にもメスライオン、子供が3頭、またしてもメスライオン、そしてボスのオスライオン。その他にもライオンが、かなり大きなプライドだとわかる。大きなプライドを維持し続けるオスライオンはやはり目を引く。威風堂々。
 
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相当数のライオンがサバンナに散って行くにつれ、多くのサファリカーも三々五々に解散していく。ライオンの子供を見ていたら、サミーがドライバー仲間からベイビーがいるという情報を聞き出した。さすが長老!(←勝手なお思い込み)

ライオンの子供どころではない、生後間もない赤ちゃんもいた。もう祭りだ、祭りだ、ライオン祭りだ。
 
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たぶん1時間半以上ライオンに被り付いていた。僕たちの満足した様子を確認するとサミーはサファリカーをライオンから遠ざける。あまり見すぎるのも動物にとってストレスになるのかも。反省しながらも興奮は抑えられそうにない。

サファリができるのはあと1時間。サミーは少し離れた小高い丘でサファリカーのエンジンを切った。草原は朝日に燃えるように風に揺れていた。目の前にはヌーの大移動。肉食動物もいいけど、サバンナらしい景色が目の前に広がる。団体で大移動していないと価値観が薄いヌー。先頭も最後尾もわからないほどのヌーの多さはダイナミックでサファリにふさわしい。
 
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日本語名のヌーは「ヌー」と鳴くからヌーと呼ばれている。同じ理由でゾウも「ゾー」と鳴いたらいいのに。
そんなヌー、走る時も首がうなだれたままでまったくやる気が感じられん。しかもウマそうじゃない。骨ばってるし、皮膚はたるたる、若くしておじいちゃん的ルックスだ。そんな朗らかな思いに浸りながら僕たちは吹き当たる風を体に感じていた。
 
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しかし、サミーだけは違う。異変に気付いていた。ヌーの大行列の向こうに3頭のライオンを見つけて僕たちに合図を送る。牧歌的だった雰囲気はたちまち緊張感に包まれた。ハンティングが見れるかもしれない。幸せすぎる。時間が気になる。

3頭のライオンは別行動を取った。1頭が静かにヌーに近づいていく。他の2頭は頭を上げたままその場に立ち尽くす。1頭が回り込みながらまた近付く。ヌーが2頭のライオンに気付く。頭が高すぎるぞ。距離は遠いが警戒を強めるヌー。2頭はハンティングに参加する気がないらしい。しかし1頭はハンティングの態勢に入る。しっかり風上を陣取りヌーから気配を消す。
 
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1頭でなんて無理だ、無理だ、無理だけど、ヌーがつまずいてくれれば・・・。そんな僕たちの願いは通じずハンティングは失敗。僕たちは変な安堵感を覚える。2頭のライオンがガッカリした顔をしてたら殴ってやりたい、そんな気持ちでガバナーズでのサファリは終わった。ありがとう、サミー。
 
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Welcome to breakfast !

のろまなフランクが笑顔で挨拶する。見事にさわやかさはない。不器用なオトコだ。そんなフランクが気を利かせて、卵の焼き方とか飲み物は昨日と同じでいいかなんて聞くんで、僕はフランクの成長に気を良くしていると、嫁が「私、今日はオムレツがいい」なんて言いやがる。得意げだったフランクの顔に影が差す。空気を読めない嫁。読まない嫁か。

【本日の僕の朝食】
ヨーグルト、目玉焼き、ポテト、紅茶
 
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荷物をまとめてエアストリップまでの送りのクルマを待っていると、僕たちの前に1台のサファリカーが止まった。サミーだ、サミーがエアストリップまで送り届けてくれるらしい。大きな荷物を載せているだけでいつもと変わらぬようにサファリカーは走りだした。

ゲートではレンジャー・トムが笑顔で敬礼をする。彼の口から発せられた言葉は「楽しいサファリを」ではなく「またね」。

サミーに見送られながら飛行機は飛び立つ。サミーが見えなくなるまで手を振る。サミーには見えているはずだ。
 
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帰りも12人乗りの飛行機だ。行きは一番前の席を陣取ったが、帰りは一番後ろの席。自然と座る席も飛行機のバランスなんか考えてしまう。

行きは直行で一番初めの降機場だったけど、帰りは1ヶ所寄ってからナイロビに向かう。その途中の降機場でおかしな光景を見た。滑走路の横に2人の男が待機していたのだ。送迎目的でもなくただ草原と滑走路の境目に立つ2人の男。なんか罰ゲームっぽいけど、実は滑走路に柵がなく動物たちが自由に行き来するため、飛行機の離発着時のみ滑走路から動物を追い出す係だそうだ。
 
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ナイロビまではガバナーズを惜しむ暇もなく夫婦は熟睡です。目を覚ませば「帰りたくないね」とか言いながら再び居眠りをこき、まるで切実さが感じられない「帰りたくない」コールを連呼するのでありました。

眼下の草原がだんだん小さくなり、赤い屋根がちらほら見えてくるとそろそろナイロビ・ウィルソン空港。
マサイマラでヒョウとサイが見れなかったらの保険でナクル湖行きを決めたんです。すでにヒョウとサイを見ちまったなんて・・・。
 
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ウィルソン空港に着くと、地上職員に誘導され歩いて空港の外に。空港には最後の一日お世話になるDoDoWorld!のデビッドがお出迎え。

ちなみにこのデビッドの唯一知ってる日本語は「OBENTO」。そのお弁当を車内で食うハードスケジュールっぷり。陣屋ないろびのお弁当は久しぶりの日本食に懐かしさは感じるけど、やっぱ食材が微妙に違うんで中途半端な日本食でした。

デビッドの運転でナイロビからナクルまで3時間、ちょっぴりうたた寝を楽しませていただきました。
 
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ナクル湖のゲートにサファリカーは到着した。午後4時。ゲートにはバブーン、サバンナモンキーがたむろし、隙あらば美味しそうな匂いのする車内に乗りこんだりしている。ナクル湖はナイロビから近いこともあって大盛況。静かさはなく、賑やか。学校の遠足で訪れている子たちもいる。
 
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メインゲートをくぐってしばらく進むと、サファリカーの渋滞に行き当たる。ライオンがいるらしい。マサイマラの要領で木の根、茂みを探してもライオンが見当たらない。やっとのことで見つけたライオンは木の上に。ライオンが木登りしてるなんて最初は考えにくかった。ライオンはナクルの湿地を嫌がって木登りをするみたい。サファリカーが止まるたびにまとわりつく蚊が憎い。
 
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遠足で来ている地元の小学生のバスとすれ違う。お互い元気に手を振り合う、彼らにとっては動物以上に僕たちの方が刺激的なのかもしれない。走っていれば蚊は顔に当たる程度で刺される心配はない。

しばらく走ると、また木登りライオンに出会う。ライオンとヒョウは縄張りがあるだろうから、ヒョウには会えないような気さえした。すると、またサファリカーの渋滞にぶち当たる。彼らの視線の先にはヒョウがいた。

レオパード!レオパード!と叫ぶ僕。
 
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その声がうるさく聞こえたようにヒョウは木を下り、サファリ客たちはそれを見届けると去っていく。
突然嫁が、渋滞が解消したそのエリアでデビッドに的確な指示を出し始めた。真っ直ぐ行って、左に曲がってそのまま待機、待って待って、もう少し待って、待って、待って、来た、来た、レオパードが来たわよ、デビッド、少しバックして、そうそこでいい、来た来た。そんな感じで嫁にサミーが降臨し、ヒョウは僕たちの目の前を歩いて行った。的確に指示に従うデビッドも興奮を隠さない。
 
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その後も嫁はヒョウの行く方向を見定め、一本の木に的を絞り、デビッドにその木の見える場所で待機するように指示を出す。嫁、またしても大正解!
 
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ナクルに入ってすぐに続けざまにライオンを見て、ヒョウを見た。それもヒョウの行動を手に取るように言い当て、そんな夫婦を見てデビッドは明らかに興奮をしていた。ラッキーだ、ラッキーだ、それしか言葉を知らないドライバーになっていた。
そんな興奮したデビッドが遠く森の中にシロサイを見つけた。僕のリサーチでは湖沿いにシロサイが何頭かいて、フラミンゴとかと一緒に写真に収める予定だったんだけど、そのデビッドの興奮を見て、僕はこのシロサイがナクル唯一のシロサイのような錯覚に陥り、長い時間カメラを向け続けた。その写真がこれだ。お恥ずかしい。
 
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サファリカーは走る。森の中から湖畔に近づく。森の中では バブーンが、名前は忘れたけどバブーンの小型版がいる。

水辺に来れば、そこにはバッファローがいて、普通にシロサイがいた。ナクル湖で2時間のサファリ中に9頭のシロサイに出会う。さっきの第一シロサイに要した時間がなんだったのかお恥ずかしい。たぶんデビッドのせいだ。デビッドはいじられキャラなのであった。しかし、尻ばかり突き出すシロサイはサービス精神に欠けるじゃないか。マサイマラのサイは必死に生きてる感じがしたけど、ここのサイは保護されてる感を醸し出しすぎです。
 
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その後はフラミンゴをたくさん見た。以前はもっと多くのフラミンゴが生息していて、ナクル湖がピンクに染まっていたとか。その分フラミンゴの糞臭かったとか。実際はそれほど臭くはない。
デビットは運転席から写メしている。満足顔だ。できればデビッドが名誉挽回のためにフラミンゴを驚かせ飛んでいる姿なんかを写真に撮らせてくれたら、僕はもっとデビッドにやさしくできたんでしょう。
 
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サファリカーは最後のあがきのように残り数分を必死に走る。またもや木登りライオンを発見。最初は2頭だったのがどんどん増えて行く。4頭か5頭か。
ナクル湖は登りやすい木があるからか木登りライオンは珍しくはないみたい。
マサイマラではライオンは草原に、ヒョウは峡谷の木の上に棲み分けがあったけど、ナクルはマサイマラと比べてダイナミックさはないけど、ナクル特有の生態系があって面白そう。3泊はないけど、2泊は微妙で、でも1泊じゃ物足りない、そんなナクルの印象でした。
 
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ナクルでお世話になるロッジはサロバライオンヒルゲームロッジ。小奇麗なロッジが並ぶ。
ロッジもナクル湖同様に蚊が多く、部屋には蚊帳があり、蚊取りマットが用意されている。天蓋付きのベッドに憧れていた嫁の夢が中途半端に叶えられた瞬間だ。

シャワーを浴びる。ここナクルの水はナクル湖の影響で水がぬるっとしていて、慣れないと石鹸が洗い流されていないような錯覚をしてしまう。もうひとつの錯覚、水が肌に弾ける。10代のお肌を取り戻したようだ。錯覚でもはしゃげるはず。
 
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ディナーへようこそ、そんなフランクはここにはいない。このレストランにいるのは蚊だ。飯を食ってても蚊に悩まされる。

ライオンヒルロッジは夜もバッフェなんで、バッフェ好きにはたまらんだろう。でも質は種類が多くなったぶん雑になった感じ。サラダばっか食ってやったぞ。狭いし、うるさいし、落ち着かない。まさにガバナーズ病。

悪いロッジじゃないんだけどサファリが終盤を迎えて投げやりになっている感じがおとなげない、ですね。
 
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【本日お見かけした動物】
バブーン、サバンナモンキー、マングース、ライオン、グラントシマウマ、シロサイ、イボイノシシ、マサイキリン、ウォーターバック、トピ、ヌー、インパラ、トムソンガゼル、バッファロー、フラミンゴ、アフリカハゲコウ、ハゲワシ、その他もろもろ。


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