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ケニア旅行記U

(2010年8月6日〜2010年8月14日)


 
 

★ 6日目 ★

 

疲れなのか、何事もなかったのか、本日の耳サファリは収穫ゼロ。カバの鳴き声も遠くにしか聞こえなかった。

いつしか僕は夜の聴覚でしか得れない興奮を「耳サファリ」と呼ぶようになった。テント越しの向こうの世界。静かな夜の闇の中で動物の物音に耳をそばだてている。夜には夜の楽しさがあった。
 
 
この日の朝は紅茶改めホットチョコレート。

温かいミルクにココアパウダーを溶かしていく。冷えた体をサファリ仕様にするためにはホットチョコレートがおすすめだ。
 
 
 
朝のサファリに向かう僕には緊張感がない。4日目となれば飽きも感じれば、慣れもある。疲れだってある。たくさんの動物を見てきたからかもしれない。

サバンナでは夜露に濡れた草を食むインパラが躍動し、カバが太陽を嫌うように森の中へ帰っていく姿が見られる。それでもお追従笑いを浮かべながら動物を探すフリをする。こんなサファリもある、怒られそうなモチベーションだ。
 

そんな中、前方に故障したサファリカーが現れた。サミーはサファリカーを後ろに停め、様子を見に行く。僕たちは心配そうに車内から眺めるだけ。すると、また1台後方からサファリカーが登場し、故障したサファリカーの横に来ると、乗っていたサファリ客が故障車で落ち込んでいるだろうサファリ客に

How you doing ?

元気?調子はどう?ってゲラゲラ笑いながら声を掛ける。普通は、大丈夫?どうしたの?じゃないのか。陽気だ。心配の素振りなんかじゃなく、心底からかっているのだ。声を掛けられたほうも一気に破顔した。だだっ広いサバンナでサファリカーが動かなくなるなんて最高のトラブルじゃないか。そうなのかもしれない。

僕たちも動かなくなったサファリカーと、天に笑い嘆くサファリ客に手を振ってお先に失礼した。サミーによれば、代わりのサファリカーが手配されるらしい。あれもサファリだね。
 
 
僕のテンションも上がり始める。動物探しなんて大人の阿呆的大ロマンを求めたお遊びを楽しまないでどうするんすか。セグロジャッカルを抱きしめそうになるぜ。

そんな中、サファリカーは急に速度を緩め、サミーが遠くを見つめた。サミーはおもむろにハンドルを左に切り、アクセルを踏み込んだ。ヒョウを見つけた時と同じくらいの興奮がサミーの顔に浮かぶ。

ライノ(クロサイ)だ!

マサイマラでサイ、それもクロサイに出会えるなんて信じられなかった。クロサイを、そしてヒョウなどの希少動物を見つけると一緒に興奮してくれるサミーに感謝した。サイは密漁で個体数が激減し、絶滅の恐れのある動物。地味だけどヒョウよりも見るのが難しいのだ。
 

そんなクロサイをサファリカーは静かに追いかける。クロサイは四肢が短いくせに回転が早く、追尾するサファリカーの速度も上がる。走り去るクロサイをインパラやトムソンガゼルが不思議そうな目で追いかける。サファリカーは慎重に距離を置いていたが、クロサイは逃げるようにその雄姿を見せつつ警戒の様子を解こうとしない。

この3日間、サミーはこのクロサイの出没したエリアで頻繁にクルマを走らせていた。どうしてこのエリアにこだわるのか、この周辺こそ充実したサファリができるエリアなのか、サミーの行動に疑問を感じていた。もしその答えがクロサイを見せたかったのなら、サミーは忍耐強いドライバーなのだ。
 

ちなみに、サミーはこのサファリ中、2回もハイエナをライノ(サイ)と言い間違い、僕たちの感情を逆なでした。もしかして、ずっとライノを意識してくれたための間違いだったのかもしれない。
ドライバーとしては「ライノを探しに行こう」なんて気休めは言えませんからね。
 
 
 
クロサイを長い時間観察した後は、昨日エンプティだったマラ川に向かう。マラ川にはヌーとシマウマが川渡りのために集まり、それを目当てにサファリカーも集まっていた。

クロサイを見すぎて遅れを取った僕たちにマラ川を見渡せるビューポイントは余ってなく残念がっていると、サミーが先客にクロサイ情報を耳打ちし始めた。先客はクロサイ情報を聞くと、迷わずそのビューポイントを放棄してクロサイを探しに行った。そのぽっかり空いた駐車スペースに僕たちのサファリカーが自然と押し込まれる。クロサイ情報を教えてやるとはサミーはなんてお人好しなんだ。

それではマラ川でしばし休憩。ヌーの川渡りはヌーの優柔不断さとの我慢比べで張り込むしかないのだ。
 

マラ川で見られるものと言ったらカバとワニ、ときどきヌーの川渡り、と川渡りに失敗して流されているヌーとシマウマ。この日も前日のヌーの残骸少々。
しかし、いつ見てもカバがワニに一目置かれて乱暴な振るまいを受けないのが不思議だ。その秩序を見ていると本当にカバの強さがわかる。そんなカバが川渡りに躊躇するヌーとシマウマ、それを待ち焦がれるワニとサファリ客の前で、大きな声を出してメイティングをはじめた。つまりそのなんだ、交尾だ交尾をおっぱじめたのだ。その大声にビビるヌー。もう臆病なヌーの川渡りなんか期待できない状況だ。
 

そんなカバだけど、意外な事実を知ってしまった。実はカバは泳げないらしい。水に浮くことさえできないのだ。あんなに水の中が似合うカバなのに、川の水かさが増すと溺れてしまうらしいのだ。カバの水死体、想像がつかん。

おまけにカバの闘い方をご存じでしょうか?僕も本で読んだだけだから無責任この上ないですが、どうも相手より口を大きく開けた方が勝者となるそうだ。無血闘争です。アゴがはずれんばかりに大きく口を開ける。開け続けて口元が裂けて、より強者になっていくんでしょうか。とても平和な感じがしますが、身体に無数の痛々しい傷があるのはなんでなんでしょうか。カバの世界にも表と裏があるような気がします。
交尾中のカバの横をヌーの死骸が流れる。これを「性と死」と言うんでしょうか。
 
 

Welcome to breakfast !

昨日まではカバのようだと感じていたフランクに手を振る。フランクも手を振り返す。生意気だ、俺様はお客様なのだ。しかし、いつもは適当に受け流していたフランクの問い掛けに、この時は浮かれてクロサイの画像を見せてしまった。朝食に1時間かかったのは僕の安易な行動のせいかもしれない。

【本日の僕の朝食】
ヨーグルト、目玉焼き、ポテト3つ、紅茶
 
 
 
これからのひとつひとつが今回の旅の最後になる、そう感じてしまう時が来ちまった。かなりおセンチ。明日の朝食後には旅立つんだから最後のクールのはじまりはじまり。
 

前回のサファリのときもそうだったけど、ロングサファリがいいと聞いていた。耳年増だ。ガバナーズの場合、朝のサファリ(6:30〜9:00)と昼のサファリ(10:30〜12:00)をくっつけて、朝食はお弁当にしてもらうのが一般的だとか。

ロングサファリにすれば、遠出ができてサファリ時間も長いので確かにいいような気がする。
だから、サミーに相談したんです。そしたらロングサファリに行きたいんだったら行くけど、朝のサファリと昼のサファリは趣向を変えてるし、ゴハンはレストランの方がおいしくていいよって言うんです。はい、あっさりロングサファリやめちゃいました。ブッシュでの朝食ができないのは心残りだけど、ロングサファリしなくてもいいくらい動物相の濃いエリアに来てるんだから、あえてこのエリアから外れる必要はないんだな。
 
 
この旅行記を見てもらえばわかると思うけど、確かに朝のサファリと午後のサファリは趣向がダブっても、昼のサファリはかなり趣向が違うものでした。簡単に言えば朝と午後は時間も長いし、肉食動物が活発なので、かなり踏み込んだサファリをするんだけど、昼のサファリは近場で朝と午後のサファリで割愛しちゃった動物たちをのんびり見せてくれるんです。僕たちの気持ちもサファリ同様にメリハリが生まれてよろしいんです。
 
 
ちなみに今回の昼サファリも、朝と午後はスルーしちゃうような動物たちの生態・行動をじっくり観察させていただきました。画像は上から、ウォーターバック♀、快速イボイノシシ、馬乗りバブーン、目がくらむシマウマ、ゾウ実は3頭、子供のトムソンガゼルと生まれたばかりのトムソンガゼル。
 

サバンナには草食動物がいて、肉食動物がいる。草食動物が肉食動物との距離を測りながら草を食んでいる。肉食動物が動く。草食動物が肉食動物を見る。肉食動物の動きが止まる。そして、進む。見られる。止まる。当たり前だけど、草食動物は肉食動物をよく観察している。

昼寝しているライオンの近くで平気で草を食んだり、仲間を捕食され、その最中なのに堂々とライオンの近くで草を食む。草食動物にとっては肉食動物に怯えているだけじゃ生きていけないだと思う。たぶん、お腹を空かした肉食動物には怯えても、お腹を満たした肉食動物なんか怯える対象じゃないのだ。
そんな思いでお腹を空かした、お腹がぺちゃんこなライオンを見ていたら、知恵を授けたくなった。静かに歩みよるだけじゃダメだ。メタボ検診で腹囲を計測されているお父さんが必死に腹囲をへっこませている逆で、ぺちゃんこの腹に空気でも入れて膨らませて、お腹満たしてますから的な余裕顔で草食動物に近寄っていけば、草食動物も油断してくれて捕食させてくれるに違いない。 
 

その後は前日に2頭の子供ライオンを見た水場近くのブッシュへ移動。いました、いました、子供と捕食されたトピはいないけどライオンのオスとメスがお昼寝中でした。


見たかったものはたくさんあったけど、そのうちのひとつを見た。確認しました。サンプルひとつだけど。
あんだけ寝てばかりのオスライオン。立派なたてがみに寝癖が付くか検証してみたかったんです。毛質的には立つくらいだから軟毛ではないわけで、おまけに寝相もよろしくなく、寝癖、寝癖、と寝癖を確認してみたんですが、微妙な髪型の乱れはあっても寝癖確認という喜ばしい結果は得られませんでした。
しかし、そんな風に揺れるライオンのたてがみを見つつ、その同じ風が僕の頭頂部の髪を揺らせば、まだハゲてなくて良かった、そう思える時間でした。

それにしても、オスライオンのたてがみは目立ちすぎてハンティングには不向きそうです。プライドのボスはメスに任せてハンティングをしませんが、プライドを追いやられたたてがみオスライオンはハンティングするんですよね?
 




 
Welcome to lunch !

【本日の僕の昼食】
スープ、バッフェ1皿、シャーベット、コーヒー

毎日朝起きて、サファリして、メシ食って、サファリして、メシ食って、昼寝して、またサファリして、またメシ食って、一日を過ごしてたらお腹が空かなくても当然だ。
サファリ客の中には大食いの人もいるけど、デザートをキャンセルしたり、食事を抜いたりする人もいる。
僕も前回を教訓にサファリ中の食事には結構気を遣った。前回、胃疲れはするし体重も増えたのだ。で、今回心掛けたのは中途半端ではありますが炭水化物ダイエット。朝と夜のパンを抜いたんです。昼に必ず提供されるパテがウマすぎてパンの欲望に負け、じゃがいももウマすぎて食っちまったけど、それ以外の主食を抜きまくった結果、見事に体重1`減を達成しました。普段の生活は7割が炭水化物なんで、炭水化物ダイエットを試す希少なチャンスに応えた、そんな充実っぷりでございます。
 
 
上の画像は、朝出しておいた洗濯ものがきれいになって返ってきたもの。下着以外は無料洗濯サービスなんですね。
 
 
 
午後のサファリが始まる。サファリカーがロッジのゲートをくぐるたびにゲート係のレンジャー・トムは笑顔で僕たちに敬礼をする。
サミーに言わせればガバナーズで一番の有名人が彼だ。その知名度は世界数ヶ国にも及ぶんだとか。

確かにレンジャー・トムが「楽しいサファリを!」と言えば楽しいサファリができる。疲れきって帰ってきても、レンジャー・トムとの敬礼シーンではみんながみんな示し合わせたように威儀を正す。

レンジャー・トムもTDRのメインキャストになれる逸材である。
 
 
しかし、こんだけサファリをしていればハズレのときもある。他のロッジに比べればハズレじゃないんだろうけど、毎日が大当たりなんで、このサファリは結果的にのんびりとしたものになってしまった。
今まで贅沢すぎたんだな。楽しかったからいいんだけど、今日は目移りするものが少なかった。残念。でも自然相手だし。
それでもサバンナ自体を満喫するにはいい機会ではあったけど。
 
 
ライオンが寝ている。ライオンは1日のうちわずか2、3時間しか身体を動かさないらしい。狩りに備えて体力を温存させているらしい。本当なのだろうか、獲物を横取りばっかしてるライオンのくせに、おこがましいぞ。これはライオンを百獣の王と崇めたい研究者たちの言い分に違いない、多分そうだ。子供と遊んでやらないで、日曜日に昼寝してる父親の言い訳のようです。

そんなわけで、午後のサファリに時間を割いちまったライオンの寝顔を少々。
 
ケニア旅行記U
 
 
Welcome to dinner !

僕たちがレストランに行くと、他のテーブルでサーブしてるフランクがうれしそうな視線をよこす。
フランクは僕たちが明日の朝、ここを出立することを知っているのだろうか。みんなに苛められ(いじられ)、仕事を押し付けられている(ように見えている)不器用な君をここに残して僕たちは帰れない、どんな間違いがあっても実際は連れて帰らないけど、そんな気持ちのままの夕食はとても切なく、特に嫁のメインディッシュのさやえんどうの多さは見ているだけで切なさを拭い去れない思いでございました。おそらくベジタブルメニューを頼むサファリ客が少なくて、余計に配分されたんだな。
 

そうそう、ガバナーズのディナー時はマサイダンスなどのアトラクションがある。4泊してると同じものを2度見ちゃうこともあって、大人としては「初めて見ます」的な興味津々顔で見させていただきましたが、アトラクションが始まると退席しにくい、そう覚えておきましょう。

【本日の僕の夕食】
スープ、サラダ、メインはチキン(写真上、下は嫁のベジタリアン用のパイ)、チョコレートケーキ、紅茶
 

とうとうガバナーズ最後の夜。感傷に浸りたいけど荷造りでそんな余裕はない。荷造りと言っても、散らかったものをバッグに詰め込むだけだけど。明日、朝のサファリをして、朝ゴハンを食ったら、もう出発なのだ。

そう言えば、ここガバナーズロッジでは日本語はまったく通じない。サミーもフランクも挨拶程度の日本語すら知らんようだ。確かに滞在中に聞いた日本語と言えば、ジャーマネ・ザキヤマさんの「アリガトウゴザイマシテ」のみだった。辺鄙な場所だけに英語必須です。
 
【本日お見かけした動物】
バブーン、マングース、セグロジャッカル、ライオン、チーター、アフリカゾウ、グラントシマウマ、カバ、クロサイ、イボイノシシ、マサイキリン、イランド、ウォーターバック、ハーテビースト、トピ、ヌー、インパラ、トムソンガゼル、グランドガゼル、バッファロー、ワニ、ダチョウ、アフリカハゲコウ、ハゲワシ、その他もろもろ。




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